ドラムのパーツの中で「ドラマーの声帯」とも言われている楽器、スネアドラム。
本来ジャズ向けのスネアドラムは、高価な物ではなく安価な物の方が演奏に合うことが多いです。
しかし近年では、ジャズ演奏にとって重要な音の特徴を際立だたせたスネアドラムが流通してきており、高価なスネアドラムも増えてきました。
そこで今回は「どのメーカーから、どんなスネアドラムを選べばいいのかわからない」というジャズドラマーさんに、ジャズに向いているスネアドラムおすすめ10選をご紹介します。
後半ではジャズドラマー向けのスネアドラムのチューニング方法も合わせてご紹介いたしますので、ぜひジャズドラムを演奏する際に役立ててください。
ジャズ向けスネアドラムとは
前提として、ジャズという音楽はドラムソロ等を除きドラムが目立ってはいけない音楽です。
冒頭で、スネアは「ドラマーの声帯」と言いましたが、ジャズ演奏でのスネアの役割は、アクセントをつけたり曲に締りを出したりと縁の下の力持ちの様な存在になります。
ジャズ音楽に向いているスネアドラムはありますが、「ジャズを演奏する際にこのスネアでないとダメ!」と言う決まりは一切ないので、自分の好きな見た目や音のスネアを使うことは問題ありません。
ジャズ向けスネアドラムにこだわるメリット
音が安定する
ジャズ向きのスネアを使うメリットとして挙げられるのは、適度な音量で演奏を安定させれる点です。
ロックやポップス向きのスネアですと、スネアの鳴りが良すぎて少しだけ音量を上げたい時に必要以上に音量が出てしまうことがあります。
その点、ジャズ向きのスネアを使う事で音量の心配を軽減し、繊細な音を安定して出すことができるようになるのです。
自分の欲しい音が得られる
前述したように、ジャズではスネアにこだわりを持たなくてもいいのですが、やはり自分の好きな音を出せた方がモチベーションも上がります。
スネアは決して安い買い物ではなく、購入するのに数万円はかかってしまうアイテムです。
せっかく購入するのならば、できるだけ自分の好きな音や見た目の物を選び、練習や演奏時のモチベーションアップにつなげていきましょう。
ジャズ向けスネアドラムの選び方
ジャズ向けのスネアドラムに求められる重要な点は下記になります。
- 小さな音が出せること
- 抜け過ぎず程よく音が抜けてくれること
- ピッチ(音程)の幅が広いこと
この3点が揃っているスネアを選ぶことで余計な気を使わずに演奏できるようになります。
これらに加え、以下3つのポイントからスネアドラムを選ぶのがおすすめ。
- サイズ
- シェルの材質
- ヘッド
これらのポイントをしっかり把握した上でスネアドラムを選ぶと、自分が求めている音を出せるスネアドラムに出会うことができるでしょう。
サイズ
口径
スネアのサイズとしてまずは口径を選んでいきます。
口径とはスネアの円周の大きさを指していて、基本的に14インチが標準サイズで他には13インチがあり、14インチの物が多く流通されています。
口径によって変わる点は主に音程(ピッチ)の高低差です。
14インチより13インチの方が高い音になり易くなりますが、チューニングレンジは狭くなります。
なので、人と違う音を出したい場合は13インチを選び、幅を持たせたい方は14インチを選ぶと良いでしょう。
深さ
次に深さを選びます。
深さは深くなればなるほど低音が増したり、レスポンスが遅れサスティーンが長くなります。
基本的には3インチ~6.5インチの幅があり、レスポンスやパワー感が標準と言われているのは5.5インチです。
こちらもチューニング次第で変わる所がありますが、ジャズであればレスポンスが速く歯切れの良い物が良いので3~5.5インチの間で選ぶのが良いです。
シェルの材質
スネアドラムの材質として大きくいうと木材と金属の2種類があります。
この2種類で異なる点は、音量と音質になり金属の方が音が高く感じやすくなるの2点です。
木材の方が音質が低音から高音まで全体的にバランスよく鳴り、金属の方が中高音域が主張された音になります。
木材は1種類で作られることもありますが、中には複数の木材を合わせて作られるプライシェルと呼ばれる物もあります。
また、金属よりも木材の方が全体的な音量が大きく聞こえる傾向があります。
木材
木材にはメイプル・バーチ・マホガニー・ビーチと多くの種類あります。
メイプルは明るく低音から高音までバランスよく鳴り、音の伸びもありつつ輪郭もハッキリしているのが特徴です。
バーチはタイトでレスポンスが良くキレのいい中低音が気持ち良く出てくれる、パンチのあるサウンドが特徴です。
マホガニーは重量があり硬い材質で低音が際立ち、ふくよかで抜けが良く丸みのあるサウンドが特徴としてあります。
ビーチはメイプルの様なサウンドが特徴ですが、音の抜けに特化しています。市場にはなかなか出回っていないので希少価値が高いです。
4種類をここでは出させて頂きましたがこの他にもまだまだ多くの種類があるので店頭で見かけた際には試奏をして好みの音を探してみるのをおすすめします。
金属
シェルに使われている金属の種類はブラス、ステンレススティール、コパー、アルミの4種類が主にあります。
ジャズに使用するのであればコパーかステンレススティールのどちらかを選べば問題ないです。
コパーはメーカによってはカッパーとも呼ばれ、金属特有の響きもありながら木材の様な響きもある優れた素材になります。
しかし、性質上柔らかいので取り扱いや保管方法に気を使わなければいけなく、とても繊細な材質です。
ステンレススティールは高音の主張が強く金属らしいサウンドが特徴で、軽快さの中にもパワーもある素材になります。
通常スネアドラムではブラスが標準と言われていますが、響きが複雑な面もあり音の取り扱いが難しい面があります。
ヘッド
スネアドラムのサウンドは装着するヘッドでも変わります。
ジャズドラムであれば、白く塗装をされたコーデッドヘッドを選ぶのがベターです。
コーデッドヘッドとはコーティングされているヘッドで表面にざらつきがあるので、ジャズでは欠かせないブラシでの演奏が可能になります。
また、厚さが3種類あり、ディプロマット・アンバサダー・エンペラーの順で厚くなっていきます。
ジャズであれば標準の厚さのアンバサダーか、1番薄いディプロマットのどちらかを選択するのが良いです。
1番厚いエンペラーですと、厚さがある分レスポンスが悪くなり小さい音が出しに憎くなるのでジャズには向いていないです。
ジャズ向けスネアドラムおすすめ10選
Pearl パール スネアドラム ユニバーサル・スチール (US1450)
pearlドラムから発売されているUS1450です。
このスネアはニッケルスチールを使用したスネアで、心地良いハリのある高音が特徴になります。
価格も手が出しやすく初めてのスネアという方にもおすすめです。
取りつけられているパーツも剛性のある、pearlの標準となるパーツが取り付けられているので耐久性もしっかりしています。
オープンな鳴り方をするのですが、細かいフレーズやバズロールをした際にも反応が良くジャズドラム特有の奏法にもマッチしたスネアになっているので、ピアノやウッドベースとやる王道のジャズを演奏する方におすすめです。
Pearl Omar Hakim Signature Drum, 6 ply African Mahogany, Natural (OH1350140)
Pearlのオマーハーキムモデルのスネアです。
このスネアは口径13インチ深さ5インチの標準よりも小さいサイズになりますが、マホガニー材を使用していてチューニングや叩き方によって14インチのスネアよりもソリッドで低音感のあるサウンドが出せるモデルになります。
サイズやシェルの材質も相まってレスポンスが高く、音量や音程の幅も広くなっているのが特徴のスネアです。
タイトながらも伸びのあるサウンドを持っており、チューニングレンジも広く細かいタッチに対する反応も良いので、オールジャンルのジャズの演奏を1台のスネアでこなしたい方におすすめするスネアになります。
Pearl パール THE Ultimate Shell Snare Drums supervised TYPE 1 by 沼澤尚 (TNS1455S/C)
pearlから発売されている沼澤尚モデルのスネアです。
このスネアはメイプル、ポプラ、マホガニーの3種類がシェルに使われており、他にはない音の広がりや低音感と心地の良い高音があります。
音のレスポンスが速く、繊細な音でありながら広がりのある他にはない特徴のあるサウンドになっています。
ジャズでは欠かせないブラシ奏法やオープンリムショット、クローズリムショットなどをしてもスネアの個性を消さずに生かしてくれる、現代のザ・ジャズスネアとも呼べるスネアです。
Pearl パール センシトーン・エリート・クラシック スネアドラム (STE14575SC)
pearlら発売されているセンシトーンシリーズのスティールスネアです。
深さが5.75インチと浅胴と深胴の良いとこどりのサイズになっており浅胴の切れやレスポンスの速さ、深胴の低音感やヴォリューム感の両立がされているモデルになります。
また、スネア内部にフェルトミュートが装備されていて、ダイヤルを回す事でミュートの具合をリアルタイムで変えられます。
ジャズにおいて重要な抑揚の部分でもプレイヤーの感覚が素直に表現でき、自分で音をコントロールしたいジャズドラマーの方におすすめです。
dw (DW-CL 1404 SD /FP-BKVE/C)
DWのメイプル素材のスネアです。
このスネアはメイプルを10層重ね、上下の縁の部分に6層のメイプルを張り付けているスネアになります。
メイプル特有の音質もさることながら、深さ4インチのレスポンスの良さ、浅めの深さになっていますがしっかりとした低音も特徴で、スナッピーの当たり方を3段階で調節の出来る便利なスネアになっています。
打面を叩いた時の音の良さも去ることながら、クローズドリムショットの音の響きや広がり方も良く、ゆったりとしつつもここぞという場面ではしっかり鳴らすジャズを演奏される方におすすめです。
ラディック スネアドラム (LC661 )コパー・フォニック 5×14インチ
ドラムメーカーの中でも歴史があり名器を多く生み出しているラディックのコパー・フォニックです。
14×5インチと標準サイズのスネアで100%コパーで作られているので深く温かさのあるサウンドが特徴です。
また、シーム(繋ぎ目)がない作りになっているので響きが均一になっています。
エイジド加工が施されたモデルだけではなく、ピュアなモデルやラグがチューブラグになっているモデルもあるので好みによっての選択肢がある事もメリットです。
コパー特有の温かさのあるサウンドがありつつ、高音が軽快になってくれるのでジャズの中でもビックバンドジャズを演奏される方におすすめの1台になっています。
ラディック スネアドラム (LM400) メタルシェル スープラフォニック
ラディックから発売されている、スネアドラムの名器中の名器と呼ばれているスープラフォニックになります。
このスネアは金属素材のスネアの基準とまで言われていて、サウンドの明るさや抜けにレスポンスの速さ、キレや音作りのしやすさとすべてが最高レベルのスネアです。
また、ハイピッチにしてもローピッチにしてもバランスが良く、50年以上変わらないスペックが故のビンテージサウンドでどんなジャズの曲にも合う、往年のベストジャズスネアでジャズの原点のサウンドを味わいたい方には欠かせないスネアです。
YAMAHA (SBS1455) スネアドラム/Stage Custom Birch
ヤマハから販売されているバーチ材を使用したリーズナブルなスネアです。
バーチ特有の中音域が目立ったサウンドで、シェルの剛性を高め効率の良い鳴りがあり抜けの良い作りになっています。
レスポンスも良いので細かいフレーズでもはっきりと音の粒が揃いやすく扱いやすいモデルになっているので、初心者ジャズドラマーの方にもおすすめです。
TAMA タマ S.L.Pシリーズ クラシック・メイプル・スネアドラム 14″X5.5″(LMP1455-SMP)
TAMAが販売しているSLPシリーズのスネアになります。
メイプル材を使用しており、バランスの良い響きがあり甘くタイトなサスティーンが得られるスネアです。
ラグにはチューブラグが採用されているので、レスポンスも良くまとまりのあるサウンドになります。
このスネアはジャズのどの曲にも合いますが、特にブラシ奏法を多用するジャズの楽曲を演奏される方には外せない1台です。
TAMA タマ そうる透 プロデュース スネアドラム 14″X5.5″ スティール 1.0mm (NSS1455)
TAMAからそうる透プロデュースのスネアです。
スティールが素材として採用されており、スティールの持ち味の高音の響きを残しつつ誰でも扱いやすいように、上下エッジ部分にシリコンを注入しサスティーンコントロールされているスネアになります。
深さのサイズが4インチと5.5インチの2種類から選べ汎用性に長けているモデルです。
チューニング次第でタイトなサウンドにもオープンなサウンドにも出来るスネアで、高音域も低音域でもレスポンスの良いサウンドが得られるので現代ジャズのアシッドジャズの演奏が好きな方に向いているスネアになります。
ジャズドラマーのチューニング方法
ドラムにもギターやベースの様にチューニングが必要です。
決まった音程はありませんが、その曲の雰囲気などに合わせてボルトをチューニングキーで回しながら、チューニングを行う事で曲の中でドラムが綺麗に馴染んでくれます。
基本のチューニング
ドラムのチューニングは打面側(表)で音程のチューニング、スナッピー側(裏)で音の伸び(サスティーン)のチューニングをし、この2つが相まってスネアの音が決ま炉のです。
また、スナッピーが裏ヘッドにどれだけ接するかによっても音は変化するのでスネアの特徴等を把握しながらチューニングを行います。
打面側(表)ヘッドのチューニング
まず表ヘッドのチューニングですが、スネアには基本10本のボルトがありますが去れぞれを均等に締めていきます。
締めていく順番は対角線上でも良いですし、時計周り反時計回りのどちら順でも構いませんが、出来るだけ均等にボルトを締めてテンションを掛けていく方がスネアの故障を防ぐ事にもなります。
10本のボルトを均等に締めていき求めている音程のところまで上げます。
慣れてくると感覚で締めていけますが、初めの内は90度を1回と決めて締めていき、隣同士や対角線のボルトから1㎝くらいの場所を叩いて同じくらいの音になっているか確かめるのもコツの1つです。
裏ヘッドのチューニング
裏ヘッドのチューニングは表ヘッドでボルトを締めた回数と同じ回数締めます。
サスティーンを短くしたい場合は表よりも1~2回多く締め、長くしたい場合は緩く締めると良いです。
しかし、短くしたいからと言って締めすぎると裏ヘッドは薄く作られているので破れてしまいます。
長くしたいから緩くしすぎると余計なノイズがなってしまうので加減が必要です。
スナッピーを敏感に鳴らしたい場合は、スナッピーが通っている場所の計4本を気持ち締めてあげると、センシティブになってくれます。
チューニングバランスの取り方
ある程度チューニングが出来たけどもう少しこの部分が欲しいだったりが出てくると思います。
例えばもう少しアタックのある音が欲しい場合は、自分側の3本を締めてあげたりなど、大きく変えなくても1本変えただけでも変わってきますので、スネアの癖や特徴をつかむのがチューニングが上手くいく道です。
ジャズドラマー向けのチューニング
前述したチューニング方を基にジャズであれば、表ヘッドは音程高め、裏ヘッドは締めぎ気味でサスティーン短めにし、スナッピーの両脇を軽く締めセンシティブに反応するようにしておくのが良いです。
もし、もう少し迫力のある音が好みであれば、表ヘッドの手前3本を軽く締めてあげるのも方法です。
まとめ
他のジャンルと違い縁の下の力持ちの様な立ち位置のジャズドラムのスネアですが、その中でもジャズに合った特性を持っているスネアを見つける楽しさも音楽の1部ですし、チューニングを覚えるのも1部です。
今回紹介したことを参考にして頂き、これからのジャズドラムライフを満喫して下さい。
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