今年もやってくるピアノ発表会の時期。だんだん近づいてくると、曲選びに悩まされていませんか。
「聴き映えのする曲がネタ切れ」
「そういえばこの曲、毎年弾かせてる気がする」
私も講師として何年も発表会を経験していますが、毎年、何冊もある楽譜を引っ張り出しては、悩みます。つい自分が弾いたことのある曲や、定番曲に頼りがちになってしまったり…。
この記事では「ちょっと変わった曲も選択肢に入れたい」という先生や、「自分で選んだ曲を弾きたい」という方へ、おすすめの曲をご紹介します。
響きもリズムも楽しい、令和世代にピッタリな曲が多めですよ。
ピアノ発表会で聴き映えする難しく聴こえる曲の選び方
楽譜に音の数が多い曲を選ぶ
楽譜上にたくさん音がある曲は、パッと見て「難しそう」と感じますよね。
一度に鳴らす音が多い曲は、聴いていても「たくさん弾いているな」という印象があります。
和音でも、両手でたくさんの音を掴む方がダイナミックで複雑な響きが生まれ、聞き映えする曲が多いです。
「音がたくさんある」といえば、こまかい動きが多い曲も難しく聞こえるポイントになります。
特に16分音符以上の細かい音、装飾音やトリルなどがある曲も聞き映えの要素になるでしょう。
テンポが速い曲を選ぶ
聴いていて「すごい!」と思うのはやはり、テンポの速い曲ではないでしょうか。
超絶技巧と呼ばれるもののほとんどはテンポの設定も速いですし、指がよく動いていると「難しい曲を弾いているんだな」と目で見ても分かりますよね。
視覚から動きがわかる曲はテクニックを魅せることができるので、客席を驚かせることができます。
ハーモニーが新しい曲を選ぶ
あえて耳馴染みのない曲を選ぶというのも、良いかもしれません。
定番の曲ほどその曲のイメージというのは付きやすく、そこから外れると「なんか違う」というギャップを生みやすいんです。
もちろん、定番曲の良さもたくさんありますが、あえて現代や近代の楽曲にチャレンジするのも聞き映えを生むポイント。
特に、令和を生きる世代の周囲にはテンポもコード展開も速い曲が溢れています。
クラシックだとちょっとだけ合わない子も、ポップスに近いと上手くハマる!ということもありますよ。
【初級】ピアノ発表会で聴き映えして難しく聴こえる曲おすすめ5選
小さな子どもの手でも無理なく弾ける、初級の曲を選んでみました。
初級でも聴き映えのする、元気な曲が多めです。
読み進めていくとだんだん難易度が上がるようになっています。
マーサ・ミアー作曲 こびとのマーチ
アメリカの女性作曲家、マーサ・ミアーはギロックの弟子として現在もアメリカのピアノ教育界で活躍しています。
「こびとのマーチ」は少しだけ不気味なメロディーが、子どもたちの想像力を育んでくれそうな一曲です。
途中で5度上へポジション移動はありますが、基本的には5音ポジション(置いたまま5指)で弾けるため初級者におすすめです。
シューマン作曲 乱暴な騎手
「ユーゲントアルバム」(こどものためのアルバム)より。
こちらの曲は“勇敢な騎士”などの訳でも知られている曲です。
定番曲ではあるのですが、小さい手でも掴みやすい音域と、聞き映えのするメロディーは一度は弾かせたい曲ではないでしょうか。
かっこいいメロディーは中間部で左手へバトンタッチするところも、入門から初級への成長を見せられる部分ですね。
スラーとスタッカートのメリハリをつけて弾くことがこの曲の肝です。
繰り返しの部分が多いので、譜読みがしやすいことも初級者にはやさしいポイントになります。
平吉毅州 作曲 タンポポがとんだ
ドレミファソに手を置いたまま弾ける曲で、はずむリズムが楽しく、親しみやすい題名が子どもにも分かりやすいです。
両手を合わせて弾くとリズムがずれやすいので、初級で弾かせる場合はリズム打ちをしたり、歌ったりして鍵盤に導入していきましょう。
シンプルな曲なので、こちらは強弱を効かせることで、聞き映えがアップします。
春畑セロリ作曲 ピム、ごきげんいかが?
【子供のためのピアノ曲集「ひなげし通りのピム」】より、優しい雰囲気の曲です。
ピムは妖精で、曲集を通じてピムがお出かけするお話が描かれています。
とても短い曲ですが、その中に長調-短調-長調と響きが移り変わるので、情感を込めてメロディーを歌わせたいですね。
音数は決して多くありませんが、しっとりと弾くと心にじんわり染み込んでくるような、そんな曲調です。
他の曲と合わせてプログラムを作るのも良いでしょう。
リヒナー作曲 短いお話
もうすぐ中級に進む生徒さんにおすすめの曲です。
リヒナーの曲は短いながらその中にドラマティックな展開があることで人気があります。
【短いお話】(短い物語)は、曲の終わりに向かって音域が広がっていくので、短いながら聞き映えのする一曲です。
アルベルティーバスは古典派のハーモニーをずっとなぞりますが、途中で左手スケールが出てくるところはテクニックが必要になります。
中級を見据えてレベルアップしたい生徒さんにもおすすめです。
【中級】ピアノ発表会で聞き映えして難しく聞こえる曲おすすめ5選
選べる曲も多くなる中級のピアニストにおすすめな曲は、やはり響きが豊かな曲。
初級では難しい、ポジション移動やこまかいペダリングが必要な曲もチャレンジできるようになります。
シューマン作曲 ファンタジーダンスOp.124-5
シューマンはピアノ学習者ための楽曲(多くは幼い子どものためのもの)をたくさん残しました。
こどものためのアルバムの冒頭には、ピアノを演奏するために必要なことがシューマン自らの言葉で綴られています。
そんなシューマンが作曲したこのファンタジーダンス(ファンタジックダンス)は、【音楽の綴り Op.124】の中の一曲です。
幻想的舞曲という題名で掲載されていることもあります。
階段を駆け上がるようなイントロから始まり、速さがありつつもメランコリックなハーモニーが展開されていくこの曲は、シューマンらしさの詰まった一曲です。
シューマンの楽譜は、原典版と編集された楽譜とでは、強弱記号などに相違が見られる場合があります。
原典版の楽譜を購入希望の方は、下記の楽譜をご購入して下さい。
春畑セロリ作曲 ソーダ色の絵はがき
【ピアノ曲集「ポポリラ・ポポトリンカの約束」】の第1曲目です。
子どもから大人まで楽しめる、鮮やかな音楽が魅力の作曲家、春畑セロリさん。【ソーダ色の絵はがき】はタイトルから、なにか素敵なことが始まるような、そんな気がしますね。
曲はカフェで流れているようなおしゃれなメロディーで、発表会だけでなく、ちょっと人前で弾くときにもおすすめの一曲です。
信長貴富(のぶながたかとみ)作曲 スタートダッシュ
2015年に出版された【こどものための曲集「スタートダッシュ」】の一曲です。
信長貴富さんは合唱曲や声楽曲を中心に作曲している方で、心の琴線に触れてくるハーモニーが魅力。
きっとこの曲を気にいってくれる生徒がいるはずです。
「スタートダッシュ」はそのタイトル通り、疾走感のある左手のリズムが特徴的で、冒頭から「ん?」となる響きでスタートします。
ラストに向かってテンポが速くなるのも難しく聞こえるポイントです。
平吉毅州作曲 真夜中の火祭
初めてこの曲を聴いたとき、とても衝撃を受けたのを思い出します。
タイトルの勇ましさに関わらず、男女問わず人気のある、とにかく全てがかっこいい曲です。
“祭り”という、日本古来の情景も講師としては大切にイメージさせていきたいところ。
途中の静かな部分は火種がくすぶるように、クレッシェンドはだんだん火が強くなるように弾くと強弱表現のレベルアップにもつながると思います。
速いテンポに転ばないように、しっかりと部分練習をすると本番でも慌てずに弾けるでしょう。
モシュコフスキー作曲 タランテラ Op.77-6
モシュコフスキーというと、練習曲をイメージされる方が多いのではないでしょうか。
この【タランテラ】はシンプルな構成で、回転するような音型が特徴の曲です。
タランテラ特有の複合拍子の魅力も詰まった曲ですので、ステップアップをさせたい生徒におすすめしたい一曲。
最初は両手で交互にメロディーを取る部分があるのですが、そこが子どもたちには面白いようです。
音域もオクターブが同時に出てくることはほとんどないので、手が小さい生徒にも無理なく弾くことができます。
難しく聞こえる曲ですが繰り返しが多いので、構成は比較的わかりやすい曲です。
【上級】ピアノ発表会で聞き映えして難しく聞こえる曲おすすめ5選
テクニックをたくさん身につけた上級は、有名なクラシック曲にもチャレンジできるレベルです。
生徒自身も弾きたい曲がたくさん出てくる頃ですが、発表会では時間的に長すぎたりして断念するケースもありますよね。
そこで、上級ではテクニック的にも聞き映えのする、3分〜5分程度の曲を中心に集めてみました。
グリーグ作曲 ホルベアの時代より(ホルベルク組曲)Op.40「前奏曲」
ホルベルクというのはグリーグの故郷ノルウェーを代表する作家の名前で、その生誕祭の音楽として作られた曲です。
弦楽版も有名ですが、実はピアノ版の作曲が先で、華々しく始まるフレーズがなにかの幕開けを想像させてくれます。
少しだけ顔をのぞかせるバロックや古典めいた響きの中に、グリーグらしい優しい和声が聞こえてきます。
右手の活発な動きに反して、左手のオクターブは堂々と響いています。太い音で、しっかり鳴らして支えると安定しますよ。
冒頭のこまかい動きは難しく聞こえますが、音型の繰り返しなので意外と弾きやすいフレーズです。
ベートーヴェン作曲 ソナタ第1番Op.2 第4楽章
ベートーヴェンのピアノソナタというと、「悲愴」や「月光」が人気のプログラムですよね。
ここでおすすめしたいのは、1番の第4楽章です。
あまり知られていないですが、疾走感のある左手で始まって一気に引き込まれてしまう曲です。
ベートーヴェンのよく考え抜かれた構成と、美しいハーモニーは練習していくほどに深みを増していくでしょう。
ブラームス作曲 6つの小品Op.118 より「2 .間奏曲」
ブラームスの晩年に作曲された「6つの小品」は、どれも円熟した深い味わいのある曲です。
その中でも特に穏やかな2番は、上級レベルだからこそできる歌い方で客席を惹きこんでほしい曲。
暖かみのある優しい旋律は、途中、ブラームスの若き日思い出させるような切なさと激しさを持って展開し、再び穏やかに終止します。
ショパン作曲 エチュードOp.10より 第9番へ短調
ショパンのエチュードというと、とても難しいイメージがありますが、この9番は比較的演奏しやすいレベルの曲です。
エチュードを勉強するときに最初に弾く曲として、よく選ばれます。
焦れるようなメロディーが徐々にダイナミックに展開していき、最後はフッと消えて余韻が残る曲です。
エチュードの中では演奏しやすいとは言っても、必要テクニックは上級レベル。
この曲の難しさは、左手伴奏の跳躍にあり、柔らかに動かすことが重要です。
うまく手や腕の機能を使えていないと、腱鞘炎などに繋がりますから、選ぶ際は練習方法にも気をつけましょう。
バッハ作曲 6つのパティータより 第2番ハ短調BWV.826 「1.シンフォニア」「6.カプリッチョ」
全部で6つあるパルティータから、今回は2番のハ短調を選んでみました。
壮大な前奏から始まり、静かに歩き始めたと思った瞬間、速いフーガへと姿を変える「シンフォニア」。
ドラマティックな展開の中に、バッハの卓越された技法が散りばめられています。
「シンフォニア」だけではやはり物足りないので、「カプリッチョ」と一緒に演奏するのもおすすめです。
決然と始まる「カプリッチョ」は、ハーモニーの美しさも際立つ一曲。
バッハ演奏のセオリーにのっとって粛々と演奏するのも、躍動感たっぷりに弾くのも、どちらも演奏者の個性が出て上級のプログラムとしてふさわしいものになるでしょう。
まとめ
ピアノの発表会は演奏する生徒にとって大切なイベント。
せっかくなら本人の個性が良い形で出る曲を選びたいですよね。
レベルはあくまで参考程度に、それぞれの手の大きさやレベルに合った、ぴったりの曲が見つかれば嬉しいです。
紹介した曲集の中にも魅力的な曲がたくさんあるので、参考にしてくださいね。
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